会員管理 データの移行

このセクションでは、Firebase Admin SDKを使用して、NCMB会員管理システムからFirebase Authenticationへのデータ移行方法をご紹介します。

特に、パスワードを使用している会員管理システムをお使いの方は、以下の重要な点に注意してください。

2023年12月20日時点で、NCMB会員管理システムのパスワードハッシュアルゴリズムについての情報は公開されていません。このため、データをFirebaseに移行した後、ユーザーに対してパスワードの再設定をお願いする必要があります。

具体的には、まずNCMBからFirebaseへ会員データを移行しますが、この時点ではパスワード情報は含まれません。また、ユーザーのメールアドレスが本人確認済みでない場合も考慮されます。このプロセスを通じて、Firebase Authenticationに安全にデータを移行する方法を解説します。

また、データ移行後のアプリケーションでユーザーがパスワードを再設定するための手順やサンプルコードについては、別のセクションで詳しく説明します。

本ドキュメントで扱うコードはGitHubリポジトリにて公開しています。

移行ツールのディレクトリ構成

移行ツールのディレクトリ構成は次のようになります。

user.jsonserviceAccountKey.json の準備の仕方は次の項以降で説明します。

.
├── data
│   └── user.json           # NCMBからエクスポートした会員管理のuser.jsonを配置
├── importWithEmail.js      # 実行ファイル(メールアドレスを使った認証。本セクションで解説)
├── importWithUserName.js   # 実行ファイル(ユーザー名を使った認証。次セクションで解説)
├── node_modules
├── package-lock.json
├── package.json
└── serviceAccountKey.json  # Firebaseからエクスポートしたサービスアカウント秘密鍵を配置

1. 移行ツールの準備

  1. GitHubリポジトリauthentication-migrationをローカル環境にcloneします。

git clone https://github.com/monaca-samples/authentication-migration.git
  1. authentication-migration ディレクトリに移動し、下記を実行します。

npm install

2. Firebaseサービスアカウント秘密鍵の生成

  • Firebase Consoleを開き、移行先プロジェクトの「プロジェクトの設定」ページにアクセスします。

  • 「サービスアカウント」タブをクリックし、Firebase Admin SDKセクションの「新しい秘密鍵を生成」ボタンをクリックします。

jsonファイルがダウンロードされるので、authentication-migrationリポジトリ直下に serviceAccountKey.json という名前でコピーします。

3. Firebase Authenticationの有効化

Firebaseコンソールにアクセスし、Firebase Authentication を有効化します。

  1. 左メニューの「全てのプロダクト」をクリック、表示された「Authentication」をクリックします。

  1. 「始める」をクリックします。

  1. 「Sign-in method」タブのログインプロバイダでは、「メール/パスワード」を選択します。

  1. 「メール/パスワード」の「有効にする」スイッチをオンにし、「保存」ボタンをクリックします。

4. NCMB会員管理のエクスポート

ニフクラ Mobile Backendからのデータのエクスポートは、次の手順で行います。

  1. ニフクラ Mobile Backendでプロジェクトにアクセスし、右上のアプリ設定をクリック

  1. メニューから「エクスポート」を選択し、エクスポートボタンをクリック

  1. エクスポートダイアログでエクスポートを実行すると、登録されているメールアドレスにデータをダウンロードするURLが届きます

ダウンロードしたデータは、JSON形式でクラス毎に別々のファイルとして出力されます。会員管理のデータ移行では user.json を利用します。下の内容は、エクスポートされたJSONファイルの中身の例です。

{
  "results": [
    {
      "userName": "SampleUser",
      "password": "hashed_password_example",
      "temporaryPassword": null,
      "authData": null,
      "mailAddressConfirm": false,
      "mailAddress": "example@example.com",
      "acl": {
        "exampleObjectId": {
          "read": true,
          "write": true
        }
      },
      "createDate": {
        "__type": "Date",
        "iso": "2023-01-01T00:00:00.000Z"
      },
      "updateDate": {
        "__type": "Date",
        "iso": "2023-01-02T00:00:00.000Z"
      },
      "phone_number": "000-0000-0000",
      "objectId": "exampleObjectId"
    }
  ]
}
  1. ダウンロードした user.jsauthentication-migration/dataディレクトリにコピーします。

5. Firebase Authenticationへのインポート

インポートは、次のコマンドで実行します。ダウンロードしたサービスアカウントの秘密鍵の情報に基づき、クラウド上のプロジェクトにデータをインポートします。エミュレーターを利用する方法については後述します。

npm run import

移行したデータを確認します。Firebase Consoleにアクセスし、左メニュー「Authentication」をクリックします。 さらに「Users」タブをクリックすると、移行したデータが表示されます。

実行ファイル (importWithEmail.js) の解説

importWithEmail.js 内の下記の部分 ( https://github.com/monaca-samples/authentication-migration/blob/311bdaa8b5e75a2ce10fa9a748920e4272495d64/importWithEmail.js#L18-L25 ) にて、NCMB会員管理データとFirbase Authenticationのデータをマッピングしています。

.importUsers([
    {
        uid: user.objectId,         // NCMBのユーザーIDをFirebaseのUIDにマッピングします。
        displayName: user.userName, // NCMBのユーザー名をFirebaseの表示名(displayName)にマッピングします。
        email: user.mailAddress,    // NCMBのメールアドレスをFirebaseのメールアドレスにマッピングします。
        emailVerified: false,       // メールアドレスの確認状態。ここでは、初期状態を未確認(false)としています。
    },
])

Authenticationへのインポートについての詳細は、下のドキュメントを参照してください。 このサンプルではNCMB側にmailAddressが存在する前提のコードになっています。NCMB側に保存されているデータの状況に応じて、登録するフィールドを調整してください。 メールアドレスを認証に使用していない場合は、電話番号やSNS認証の移行を検討してください。

エミュレーターを利用する

Firebaseのクラウド環境に接続して移行を行う前に、ローカル環境でFirebaseのエミュレーターを稼働させてデータの移行を検証できます。

  1. Firebaseのエミュレーターを起動する。詳細はこちらを参照してください。

  1. 下記のコマンドで移行を実行する

npm run import:emu

まとめ

本項ではNCMB会員管理のデータをFirebase Authenticationに移行する方法を解説しました。この状態ではユーザーはログインできないため、パスワードの再設定を行う必要があります。次項でパスワード再設定を行うサンプルを解説します。

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